7-5. DNA導入・増幅用の大腸菌プラスミドベクター
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1) プラスミドベクターかファージベクターか?
ファージは操作が煩雑でDNAやタンパク質を大量に得にくいが、DNA導入効率が高く、大きなDNAを導入でき、一本鎖DNAが得られるものもある
このため当初はファージベクターで遺伝子をクローニングし、それをプラスミドベクターで移し替えて増やすのが一般的だった
2) プラスミドベクター用菌株
プラスミドを安定に保持させるため、宿主菌には主要組換え遺伝子recA欠損株recA-を使用すべき
事実、大部分の汎用菌株はrecA-
タンパク質の過剰生産ではタンパク質分解酵素の少ない細胞(e.g. BL21株)も使われる
青白選択を行う場合は、ゲノムのlacZが欠損型で、代わりにβ-gal ω断片をもつF'菌を使用する
3) 古典的サブクローニング用ベクター
当初はColE1のoriをもつベクターとして、複数の薬剤耐性遺伝子(e.g. Ampr, Tcr, Cmr)をもつpBR系プラスミドやpUC系プラスミドが使われた(いずれもAmprをもつ)
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pUC系プラスミドはColE1のrom領域を欠損しているためによく増え、さらにlacPOZカセットとlacIをもつので青白選択ができる
ベクター名がもつ数字はMCSの種類や向きを示す記号で、pUC18とpUC19では少なくとも14種の制限酵素が使えるMCSがあり、その向きが逆になっている
pACYC184はp15Aプラスミドのoriをもち、ColE1と共存できる
4) 多用途汎用ベクター
現在の汎用ベクターは、さらに多くの機能性配列をもっている
pBluescript II ベクターを例に説明すると、このベクターはpUCを基本構造とし、lacZの中に20個以上の制限酵素認識部位をもつMCSを有する
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MCSのすぐ上流と下流にはそれぞれT7ファージとT3ファージのRNAポリメラーゼのプロモーターがあり、転写ベクターとしても使える
pUC118/pUC119とpGEM-3ZfはpUC18/pUC19に対応するMCSをもち、後者はSP6ファージとT7ファージのRNAポリメラーゼのプロモーターをもつ
これらのベクターはいずれもf1やM13ファージのIG領域がlacZに対して正あるいは逆の方向に挿入されているファージミドで、希望する側の一本鎖DNAが得られる
5) 特定の目的で使用されるベクター
低コピーベクター
実験の目的や含まれる遺伝子によっては、ベクターのコピー数をあえて高めない方がよいものもある
発現ベクターに多い
pBR322やpACYC184のoriがそれに該当する
レポーターベクター
主に真核細胞において、遺伝子発現装置や制御配列の強弱を、マーカーである酵素タンパク質の量で解析するために用いる
転写制御因子発現ベクターとともに用いることもある
シャトルベクター
大腸菌と他の生物の両方で安定に複製できるベクター
他の細菌や菌類で働くoriをもつ
PCR産物クローニングベクター
PCR増幅DNAをクローニングするためのベクター
TAクローニングベクターなどがある